山繭を再び

「山繭の里」広島市可部地区の「ヤママユ同好会」世話人小田貢氏の講演より

広島市安佐北区可部地区では江戸中期頃に山繭織りが始まったと言われている。特に明治から昭和初期に掛け野山で盛んに取られていた。
衰退したのは理由があるが、第1はクヌギ、ナラ カシなど飼料木がなくなった事、電灯などの発達などヤママユガの育成に不具合が出来た(自然環境の変化)。綿や麻等安価な糸が出回った事など。

1999年可部町商工会は地域の活性化に山繭の復活運動を広げ2月「ヤママユ同好会」が発足した。 4月安佐北区の山林を歩き幼虫17匹を捕獲、自宅で鳥など外敵から護るために庭木にネットを張り、育て方、餌など研 究し2003年4月には幼虫が2000匹以上に増えた。 会員は近隣地区から50名以上に。

可部の山繭織りは江戸中期に始まったと言われるが、鋳物、太田川舟、牛市と共に可部を支える四本柱の一つで可部地区の古老の間では心の片隅に残っていて、旧家からは記録や現物を目にすることができると言う。

山繭織りには採取、糸紡ぎ、染色、機織り、問屋など多くの職人に支えられ、最盛期の1910年頃には「可部紬かべつむぎ」の名で約300人の行商人が全国へ販売していた。

今では地域の小学生から高校までも参加し機織り学習会、飼育、繭から紡いだ黄緑色の糸でしおりを作った。 世話人の小田貢氏は(72歳)「命の大切さや先祖の知恵を学べる」と伝統文化の継承に力を入れている。

天繭は変態します。

※ 天蚕は、一過性で卵→幼虫→蛹・繭→蛾と変態します。(同好会飼育観察から)

防鳥網の中でナラ、クヌギを育てる 防鳥、害虫対策の防網の中で育つヤママユ蛾 発蛾するとつがいにして籠に入れる。既に籠の右手には仁丹ほどの大きさの卵を産み付けている。

1令から5令・繭の期間・蛾の期間・卵の期間を写真で追って見ました。

ヤママユの卵は数個づつ樹皮や枝にかたまって生みます。そして卵のまま越年します。
4月中旬頃より孵化し始めます。

同好会の場合は容器に入れて日陰で保護する。孵化が確認されたら卵の容器と飼料樹の梢を並べて新梢の先を容器の中へ。
4月中旬頃から孵化が始まる。

孵化した幼虫は飼料樹の柔らかい葉に移す。アリ、クモ、カメムシなどから護る為、駆除が必要。幼虫の発育は飼料枝により10日から20日の違いがある。ナラ、クヌギ系は早い。水を飲む習性もある。


(1令(1回目の脱皮)5回繰り返す)
5月脱皮を始める。約10日毎に1令から5令まで5回の脱皮を重ねる。

午前中数時間日射の当たる所へ出し、直射の場所は餌の葉が枯れやすいので霧吹きなどで加湿すること。
3令飼料木に給水容器の水を飲み易いように保水する。
5令3日目頃から食欲旺盛になる。餌不足にならないように注意。
6月中旬頃蛹(繭)になる。
繭は自身で葉をくるむようにその中に作られる。

蛹の期間は20日から90日で水はけの良い場所がよい。
野鳥にとっては最高のご馳走のようで、防鳥網が必要。
蛾の期間は5日間位。オスの触覚は非常に大きく、これはメスのにおいをかぎ分ける為のものです。その期間に交尾し、メスは生きている限り卵を産みます。ヤママユガは羽を広げると15センチ以上もある。

ヤママユガには口がありません。成虫は何も食べないでオスは交尾しメスは生きている限り卵を産みます。

製品ができるまで

生糸をとる場合は蛹が出る前に熱湯で 加熱し糸口を見つけなければならない。
お湯の温度があまりり下がらない内に糸 口を見つけ、7個分を1本の糸にして糸 巻き機に巻き付けていく。
糸が細くすべ てがスムーズに解けていく訳ではないの で、常に補足繭の糸口を準備し、神経を 使う。
糸巻き機はその為に考案された手作りの精巧なもので、その立派さにも驚いた。
指先を微妙に動かしながら、7個の繭から引いた糸を1本の糸にねじて糸巻き機 に送り込むのも技が必要。
上部に取り付けられた金具が、糸巻き機 に神経を注いでいなくても、平均にバランスよく巻き取ってくれる。
糸を引く時、生糸が途中で切れたりこぶ が出来て、製品にならないものを集めた もの、私たち子供の頃「まわた」と言って いたもの。
弾力があり、手触りが良い。
孵化した後の繭を広げたもので、紬の  材料になる。同じ原料でも違いが解か る。
これを見て高級品だった事がよく 解かる。
糸巻きに巻き取れれた生糸。  天然の色の美しさが解かって頂けると思う。これは7月の繭からの生糸。
マフラーを織られた作品。
昨年の9月の繭の生糸で作られた物であるが、7月の繭の糸と9月の繭の糸とでは色合いが幾分違うと言われる。
同じ餌でも時期が違う養分が違うのか?

参考資料  黒瀬新吉の自然(じねん)塾   実践中の原藤さま

山繭製品

取材から約1年後の2008年2月の展示会には沢山の製品が並ぶほどになっていて驚いた。